研究概要 |
本年度は,主として3つの研究を平行して進めた。一つは本研究で新しく購入した質量分析計であるFinnigan LCQとキャピラリー電気泳動(CE)装置HP 3DCEを用い,質量分析法(CE)-MSシステムを構築することである。質量分析計の設置までに時間がかかり,まだ稼動初めてからの時間が少なく,本格的な利用には至っていない。購入した装置は本来HPLC-MS用に設計されたものであり,CEと結合するためには,種々の操作条件の最適化が必要であった。エレクトロスプレーイオン化(ES)インターフェースを用いるCE-MSとしては期待通りの性能が得られることが判明したので,ESIを用いてミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)とのオンライン結合を行っている。初期のデータでは期待通りの性能が得られているが,さらに検討が必要な部分もある。もう一つは昨年度まで基盤研究(A)で行っていた研究の継続で,以前から所有していたMS装置を用いて,大気圧イオン化(APCI)によるMEKC-MSの研究である。これまであまり知られていなかったAPCIを用いたCE-MSの基本的特性を多く明らかにできた。ESIによる噴霧の時のシース液の流量,ミセル濃度,緩衝液濃度は検出感度にあまり影響しないが,脱溶媒室温度とドリフト電圧は検出感度に大きく影響することが分かった。応用例として,フタル酸エステルのMEKC-MSを行った。3つ目の研究は,直接MEKC-MSを行うのでなく,稀薄溶液試料のMEKC-MSを行うための準備として,MEKCによる中性試料のオンライン濃縮法について検討した。疎水性の強い中性化合物であれば,100倍程度の濃縮が可能であることが明らかになった。
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