研究概要 |
フェノール酸化酵素前駆体活性化酵素(Prophenoloxidase-activating enzyme,PPAE)は26年前に道家により高度に精製され、その性質が報告されている(Arch.Biochem.Biophys.vol.157,210-221(1973))。その後この酵素についての分子生物学的研究は全くなされていない。道家の研究以後、フェノール酸化酵素前駆体活性化系はセリンプロテアーゼ前駆体、カビや細菌の細胞壁成分を認識する認識タンパクなどから構成されるカスケードであることを我々は明らかにした。ごく最近、抗カビペプチドであるドロソマイシンの合成誘導にカビの細胞壁成分により活性化されるプロテアーゼが働いていることが明らかにされた。さらに、80年代後半からショウジョウバエの初期発生においてペリビテリン間隙で働くプロテアーゼカスケードが胚の背腹軸決定に重要な役割を演じていることが明らかになった。現在、昆虫に見出されているプロテアーゼカスケードが相互にどのような関係にあるかに強い関心が集まっている。このような背景のもとで、PPAEの精製、タンパク化学的諸性質、酵素学的性質、cDNAクローニングについて研究を行った。PPAEはペリビテリン間隙で働くプロテアーゼとして知られているeasterに相同なタンパクであり、PPAE遺伝子は表皮細胞と血球それに唾液腺で発現していることが明らかになった。さらに、PPAEは前駆体として合成されるが、アルギニンのカルボキシ側でただ一カ所ペプチド結合が切断されるで活性化されること、特異抗体を用いてPPAE前駆体がカイコ卵の抽出液中に検出できることなどが明らかになった。これらの成果をまとめて、J.Biol.Chem.vol.274,7441-7453(1999)にまとめて発表した。
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