研究課題/領域番号 |
09304075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芦田 正明 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50012422)
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研究分担者 |
落合 正則 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (10241382)
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キーワード | フェノール酸化酵素前駆体活性化系 / 昆虫 / 生体防御 / セリンプロテアーゼ / 異物認識 / 自然免疫 / Tollレセプター / 抗菌ペプチド |
研究概要 |
昆虫は免疫グロブリンに依存した異物認識機構を持たない。この昆虫が侵入してきたカビやバクテリアなどの異物をどのような仕組みで非自己として認識しているかは、まだよく解明されていない。昆虫では血球細胞による貪食、被のう形成、脂肪体による抗菌ペプチドの合成など、カビやバクテリアに対する有効な生体防御機構が発達している。この生体防御機構が働き始めるには、まずカビやバクテリアが非自己であると血球や脂肪体細胞に教える仕組みが存在しなければならない。その仕組みにはカビやバクテリアの細胞壁成分と特異的に結合する分子が含まれていることが必要条件である。そのような分子はまだ昆虫の細胞膜上では同定されていない。我々は昆虫血液中に存在するフェノール酸化酵素前駆体を活性化する一種のプロテアーゼカスケード(proカスケード)がカビやバクテリアの細胞壁成分と特異的に結合する分子を含んでいることを1980年代の半ばに報告し、それらをペプチドグリカン認識タンパク、β-1、3-グルカン認識タンパクと命名した。本年度はproカスケードを構成するセリンプロテアーゼ前駆体proBAEEaseが活性化されて生じるBAEEaseより、prospatzleがspatzleに変換されることを証明した。ショウジョウバエで、spatzleは脂肪体細胞のレセプター(Toll)のリガンドで、spatzleがTollに結合すると抗黴ペプチドの合成が誘導されることが知られている。我々の実験結果はproカスケードが黴を異物として認識し、認識したシグナルを増幅し、細胞へ抗黴ペプチド合成のためのシグナルを送る働きをしている可能性を示している。
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