研究概要 |
太陽電池、TFTディスプレイなどの大面積テバイス、あるいは電子機能と量子機能のような異なる機能を複合して用いるデバイスなどでは、異種物質に高品質半導体物質構造を形成することが必要となる。 本年度研究では、シリコンを主体とする半導体物質を異種物質上に形成するための構造制御法として、「水素原子」をメデイエータとして物質構造プロセスを高精細に制御する技術の開発を目的として下記の研究を行った。 (1)ガラス基板上に高品質多結晶シリコン薄膜を成長する技術の開発では、分光エリプリメトリーによる「その場観測」下で表面化学反応を制御することによって、(a)シリコン種結晶のガラス基板上への形成、(b)種結晶上への多結晶シリコンの擬エピタキシャル成長の2ステップに分離した「Two Step Growth(TSG)法」開発の基礎研究を行った。各ステップを異なる「反応容器」で外気に曝すことなく、連続的に行える「薄膜作製装置」を設計試作し、また、それぞれのステップに適した化学反応系の選択を行った。その結果、(a)種結晶育成には、シリコン超薄膜(1-10nm厚)の堆積と水素原子による構造緩和を繰り返すlayer-by-layer法が適していることを明かにし、ガラス基板上100nm厚のシリコン膜で基板上温度(Ts<360℃)で、結晶化率100%の種結晶が形成できることを示した。また、(b)その種結晶上に多結晶シリコンを成長させる際、堆積前駆体の選択と構造形成表面反応を促進するための水素原子量を調節することにより、シリコン結晶の2次構造(テクスチャー)を制御することが出来ることを見い出した。(220)に優先配向した構造と(400)優先配向構造と造り分けることに成功し、しかも、種結晶上ではこれらのテクスチャー形成がTs<300℃の低温でも十分可能であることも確認した。得られた(400)優先配向膜の表面は平滑で粒界も密に結合した級密な構造を示すことから、テバイス応用が期待される。また、6端子法によるHall移動度を広い温度領域(100℃から-200℃)で測定した結果、(220)優先配向膜では室温にてキャリア濃度10^<17>cm^3程度で約20cm^2/VsのHall移動をしめした。-200℃の低温においても移動度の減少は少なく、粒界における障壁は低く、キャリアーの大部分は粒界をトンネル効果で通過できる可能性をしめした。 (2)シリコン基板上に高品質II-VI族化合物結晶を成長する技術開発では、シリコン基板(400)上のZn(S,Se)結晶を成長する技術研究を行った。本研究では有機金属化合物、たとえばジエチル亜鉛(DEZn),ジエチルジサルファー(DEDS),ジエチルジセレン(DEDSe)を原料とし、これらの分子を水素原子との衝突反応で分解し堆積前駆体を形成し、Ts=200℃で程度の低温基板上にて、原子層を交互に形成する新規に開発した結晶成長法を用いた。
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