クラスターイオンビームと個体との非線形相互作用の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09305004
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 山田 公 京都大学, 工学研究科, 教授 (00026048)
• 研究分担者: 松尾 二郎 京都大学, 工学研究科, 助手 (40263123) ; 高岡 義寛 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90135525)
• キーワード: クラスターイオン / フラーレン / 非線形 / ホウ素クラスター / 損傷形成 / 分子動力学

研究概要

常温ガスの原子、分子を数百の粒子の集団(クラスター)にし、イオン化・加速したガスクラスターイオンビームの固体との非線形相互作用を解明し、新しい材料プロセスとして展開させるために必要なデータを集積し、その基盤の確立を行った。もっとも興味のある現象は、クラスターの衝突が同じ速度を持つモノマーイオン衝突の線形和にならないことである。このクラスターイオン特有の照射効果である非線形照射効果の例として、クレーターの形成が報告されている。これまでサイズの異なる炭素クラスターイオンをHOPG(Highly Oriented Pyro1itic Graphite)上に照射し、クレーターの形成を調べてきた。その実験結果によると同じ速度を持つ炭素クラスターが作るクレーターの大きさはサイズに依存し、サイズ11以上のクラスターの場合にはクレーターの形成が見られるが、サイズが7以下の時にはクレーターの形成が見られなかった。すなわちクラスターの非線形効果はサイズ10以上で顕著になることが明らかとなった。クラスター特有の非線形現象が起こるために必要なクラスターサイズの検討を、分子動力学計算により行った。計算を行った系は、基板にシリコンを、クラスターイオンにホウ素を用いた。ホウ素と炭素は質量数も近いため同じような衝突現象が起こると考えられる。また、ホウ素クラスターは半導体へ注入されドーパントとなることから、物性上も興味を持たれている材料である。この計算では直鎖状のクラスターを基板に対し垂直、または平行にして衝突させ比較を行った。その結果、直鎖の長さが3以上で垂直に入射する場合に、個々の入射原子同士の相互作用により、クラスターとしての衝突現象が生じることが明らかになった。クラスターを直方体とした場合、クラスターが3以上の直鎖部分を持つためには、9個以上の原子数が必要である。このモデルにより、サイズ10以上のクラスター衝突において非線形現象が観察されるという結果を説明することができる。

研究成果

• [文献書誌] I.Yamada: "Gas Cluster Ion Beams for Processing New Materials" Physics of Clusters. No.3. 74-85 (1998)
• [文献書誌] I.Yamada: "Progress,Demands and Prospects for Advanced Ion Beam Processing" Materials Chemistry and Physics. Vol.54. 5-14 (1998)
• [文献書誌] J.Matsuo,G.Takaoka,I.Yamada: "Indium Oxide Film Fomation by O_2 Cluster Ion-Assisted Deposition" Materials Chemistry and Physics. Vol.54. 258-261 (1998)
• [文献書誌] J.Matsuo,I.Yamada: "Molecular Dynamics Simulation of a Carbon Cluster Ion Impacting on a Carbon Surface" Materials Chemistry and Physics. Vol.54. 139-142 (1998)
• [文献書誌] J.Matsuo,I.Yamada: "Energy Dependence of a Single Trace Created by C_<60> Ion Impact" Materials Chemistry and Physics. Vol.54. 143-146 (1998)
• [文献書誌] J.Matsuo,I.Yamada: "Angular Distributions of the Particles Sputterd with Ar Cluster Ions" Materials Chemistry and Physics. Vol.54. 262-265 (1998)