研究課題/領域番号 |
09305005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 啓文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (40283626)
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研究分担者 |
堀内 俊寿 京都大学, 工学研究科, 助手 (10238785)
夛田 博一 京都大学, 工学研究科, 講師 (40216974)
松重 和美 京都大学, 工学研究科, 教授 (80091362)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 強誘電体薄膜 / ナノスケール分極 / 分子メモリー |
研究概要 |
本研究では、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の導電性の探針を用いて有機強誘電体薄膜上の局所領域に高電場を加えることによりナノメートルスケールの微細な分極反転領域を形成し、このナノスケール分極領域の構造・電気特性を評価するとともに、ナノスケール分極による超高密度記録への応用可能性について検討することを目的としている。 実験では、有機強誘電体材料としてフッ化ビニリデン-3フツ化エチレン分子共重合体(P(VDF/TrFE)73:27)を用い、試料薄膜は白金またはグラファイト基板上にスピンコート法により作製された。分極反転領域の評価は、導電性探針に微小振動電圧を加えることにより薄膜に局所的な逆圧電振動を励起し、この振動応答をSPMにより測定することにより行われた。 分極領域の微細化のためには、SPM探針と基板を接近させ高電界領域を集中させる必要があり、強誘電性薄膜の厚さを薄くすることが不可欠となる。一方、膜厚が数10nm以下になると、基板の界面効果の影響で強誘電性が減少することが報告されている。われわれは、本研究において微小分極領域の圧電応答の大きさが、その電界の方向に依存することを見い出し、分子-基板界面の相互作用により界面近傍の分子は分極反転するためのエネルギー障壁が大きく、実効的に分極が凍結していることを明らかにした。さらに、この非対称応答を定量的に測定することにより、分極凍結層の極性と厚さを評価した。 また、非接触状態でSPM探針に加えるバイアス電圧を振動させることにより、試料の局所的な表面電位を測定する(走査型マックスウエル応力顕微鏡)ことが可能となる。この本測定により、形成された分極領域にはポーリング極性と一致するキャリアが表面近くに注入されトラップされていることが新たに分かった。
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