1フェムト秒(10^<-15>秒)の波束の広がりは0.3μmであり、0.3μmの波長の1サイクルに対応する。光のパルス幅は振動の包らく線の幅であるから、既に定義を越えている。1フェムト秒を切り、アト秒(10^<-18>秒)の領域に入るためには、短波長であることが絶対条件である。この研究では真空紫外から軟X線のコヒーレント光である高次高調波を用いてアト秒パルスに挑戦することが目的であった。平成9年度は極短紫外域(88nm)における新しいパルス幅の測定法を確立した。パルス幅測定のためには非線形光学過程が必要である。この研究で初めて高次高調波による多光子イオン化を観測し、自己相関法を用いて、パルス幅の測定を行った。パルス幅は88nmで27フェムト秒であった。繰り返し10Hzのレーザーを用いたため測定に20分程度かかり、その間のレーザーの安定性の問題があった。そのため繰り返し1kHzのテラワット級チタンサファイアレーザーを開発した。 更なる短パルス化のためには高調波発生過程で起きるチャープを補償する必要がある。高調波に正の分数を与えることにより初めてパルス圧縮に成功し13フェムト秒を得た。この時用いた基本波のパルス幅は115フェムト秒であり、10フェムトの基本波を用いれば、アト秒パルスが得られる見通しを得た。
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