研究課題/領域番号 |
09305010
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
城野 政弘 大阪大学, 工学部, 教授 (20029094)
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研究分担者 |
植松 美彦 大阪大学, 工学部, 助手 (80273580)
菅田 淳 大阪大学, 工学部, 助教授 (60162913)
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キーワード | 疲労強度 / 疲労き裂進展 / 層間はく離き裂進展 / FRP / 一方向けい素鋼板 / き裂開閉口挙動 / 微視的観察 / すべり変形 |
研究概要 |
先進複合材料である熱可塑性樹脂Poly-Ether-Ether-Ketone(PEEK)をマトリックスとするCFRPよりENF試験片を作成し、473K(200℃)の高温環境下におけるモードII型の疲労層間はく離き裂進展試験を行った。この時荷重繰返し周期を0.2sおよび361sとし、層間はく離き裂進展に及ぼす試験温度と荷重繰り返し周期の影響について検討した。その結果、き裂は繰返しせん断応力により進展するが、周期の影響を受けず、疲労き裂進展速度daldnをエネルギー開放率範囲ΔGで評価することが可能であることが判明した。また、高温下でのdaldnは室温環境下に比較して低速となり、高温下でのき裂進展抵抗が高い。このようなき裂進展抵抗の上昇は、き裂上下面の接触が高温下では粘弾性的となり、接触抵抗が上昇するためと考えられる。さらに、473KにおけるモードI型の疲労層間はく離き裂進展では、荷重繰返し周期が20s以上でき裂進展が繰返し数依存型ではなく、き裂先端近傍におけるマトリックスのクリープ変形により時間依存型でき裂が進展することが報告されている。しかし、モードII型の層間はく離では、周期が長い場合でもき裂進展は繰返し数依存型となった。これは、高温下ではき裂上下面の静的な接触抵抗が高いため、き裂先端におけるクリープひずみが拘束されて拡大せず、繰返し荷重による損傷でき裂が進展したためと考えられる。 一方、微視的なき裂進展機構の検討に関しては、まずほぼ単結晶材料のき裂進展挙動が観察できると考えられる一方向性けい素鋼板を用いて疲労き裂先端のすべり変形を今年度購入した超高分解能の原子間力顕微鏡より観察することにより、マクロな支配力学因子とナノレベルの変形挙動との関連を検討した。本研究で用いた材料は優先すべり方向が2方向しかない材料であり、微視的な観察において巨視的力学量とすべりとの対応が得られやすい材料である。高進展速度域においては、いわゆるすべり面分離によるき裂進展機構を示すが、低進展速度域においてはすべり変形が生じるすべり方向が限定されることで混合モード型のき裂進展を生じ、き裂進展方向も定量的に評価できることが明らかとなった。
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