円偏光X線を用いた共鳴磁気散乱法によりFe/Gd多層膜の磁化構造、および、界面磁気構造を解析した。前者は鏡面反射、後者は散漫散乱を用いた。磁化構造に関しては、整列状態/捩れ状態の構造転移がGd層で起き、その温度は多層膜の面内磁化が最小となる温度と一致する、いずれの状態でもGd層は膜厚方向に非常に不均一な磁化をもち、界面附近の磁化はバルクGdの磁化に近いが、内部の磁化は小さい、捩れ状態ではGdモーメントが膜厚方向にやはり不均一に回転し、温度によって回転の様子が異なる、整列状態ではFeモーメントとGdモーメントは反平行である、5nm程度のGd膜のキュリー温度はバルクGdより50K以上低い、ことを明らかにした。これらは、Gd層の磁化分布を数オングストロームの分解能で解析して得られた結果であるが、この種の研究として世界初である。界面構造に関しては、多層膜の2次および3次ブラッグ点附近で共鳴磁気散漫散乱を測定し、これを解析するため、ボルン近似の電荷磁気干渉散漫散乱理論を展開し方。その結果、実験に用いた試料では、界面内の高さ-高さ相関距離が電荷磁気干渉では150nm、純電荷散乱では40nmであり、磁気界面は化学界面より顕著に滑らかであることが分かった。また、Fe/Gd界面の磁気ラフネスはGd層内に及んでおり、内部磁気界面の構造を現在解析中である。
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