研究概要 |
トンネル型スピンバルブ素子の交換バイアス磁界印加用反強磁性FeMn層の作製条件の最適化を行うとともに、Si下地層によるCo膜の配向促進効果を利用して。Co/Cu薄膜の結晶性を高め、膜全体の抵抗率を下げるとともに、適度なアニール処理を施すことで多層膜の周期性を向上させ、多層膜内のユニット層の磁化の反強磁性的結合を促進させることにより、スピン依存散乱効果の差を大きくすることで全体の磁気抵抗効果を増大させることに成功した。主な成果は下記のとおりである。 1.FeMn層の配向制御 Si下地層厚を変化させたSi/Ni-Fe/Fe-Mn三層膜においてNi-Fe層に印加される交換結合磁界HexはSi下地層を用いない場合ではNi-Fe層がランダム配向した微結晶組織となってしまい、Fe-Mn層の(111)配向が得られず結合磁界が観測されなかったが、20ÅのSi下地層をもちいることでFe-Mn層の(111)配向が著しく向上し、最大で90Oeの交換結合磁界を得ることに成功した。 2.Co/Cu多層膜のGMR特性改善効果 a-Si層をCo/Cu多層膜の下地層として用いると,他の下地層材料を用いるよりもはるかに良好な結晶配向性が誘導されることを見出した.例えば,Ta下地層もCo(111)面の結晶配向を促進する特性を有しており、Co単層膜においてはSi下地層よりも良好な結果が得られるが、Co/Cu多層膜の下地層として使った場合には,Si下地層を使った場合の6分の1程度のピーク強度となる。Co/Cuの層数が大きくなるほどピーク強度に大きな差が現れる傾向があった。 3.トンネル型スピンバルブ素子の作成 Siスパッタ層を窒化して絶縁層としてトンネル型スピンバルブ素子の作製を試みたところ、トンネル電流による非線形電流電圧特性を確認することに成功した。また、FeMn反強磁性層による交換バイアス磁界の印加にも成功した。
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