研究概要 |
1.分散マネージメントソリトンの理論解析 ・正および負の分散値を持つ光ファイバを交互に接続した分散マネージメント伝送路を伝搬する分散マネージメント(DM)ソリトンは、振幅、パルス幅とチャープの周期的な変動を考慮して定義した平均非線形、平均分散と平均チャープの釣り合いによって形成されることがわかった。 ・DMソリトンのような非線形光パルスでは、同一波長の隣接パルス間の相互作用によってパルス位置が変化し、符号誤りが生じる。分散値の差が極端に大きくない場合、パルス間に位相差や振幅差を与えることが相互作用の低減に有効であることを示した。また、相互作用による位置ずれの極めて小さい伝送路パラメータが存在することを数値シミュレーションで示し、そのパラメータ領域において、2つのパルスからなる定常解である双峰ソリトンを発見した。さらに、この双峰ソリトンを応用してパルス間相互作用を抑えるための伝送路符号の割当法を提案した。 2.分散マネージメントソリトンの伝送制御 ・伝送路中に光フィルタとソリトンパルス列に同期した振幅変調器を挿入すると、DMソリトンのエネルギーが安定化される。この効果は、分散マップ中の制御素子の挿入位置に強く依存することを明らかにした。さらに、変調器の挿入位置を適切に選べば、光フィルタなしでパルスのエネルギーを安定化できることを明らかにした。 ・ソリトン波長分割多重伝送の受信器においてデータ判定時刻を微調整することによってチャネル間相互作用の影響を大幅に低減できることを示した。 ・分散補償周期を短くした高密度DMソリトンを提案し、1波長80Gbit/s伝送への適用性を、またスロープ補償用の分散シフトファイバを光増幅器直前に置くことで効率よく分散スロープ補償が行えることを数値シミュレーションで確認した。 3.単パルス発生、ソリトン伝送実験 ・単一モードファイバと分散シフトファイバを組み合わせた櫛形分散配置ファイバ(CDPF)をソリトン伝送に用いることを提案し、10Gbit/s周回実験において、分散距離の約2倍である増幅器間隔80kmで、2,000km伝送後の符号誤り率が10^<-9>以下を達成した。 ・非零分散シフトファイバで構成した60km長の伝送路を用いて40Gbit/s高密度DMソリトン周回実験を行い、1,630km伝送後のアイパターンを観測した。 ・CDPFを用いたピコ秒ソリトン光源について、数値シミュレーションで最適設計を行い、実験で自己相関幅3.7ps、繰返し周波数86.8GHz、圧縮技術を併用して幅1.6ps、繰返し160GHzの光ソリトンパルス列を発生させた。 ・分散フラットファイバで構成した高密度DM伝送路に、幅3.7ps、間隔10psの2パルスを伝送させ、パルス間相互作用によって伝送後のパルス間隔が狭くなることを観測した。さらに、幅2.6ps、繰返し周波数87GHzの高密度DMソリトン伝送実験の結果、パルス列が約600kmにわたって伝搬可能であることが確認された。 4.非線形光デバイス ・非線形光ループミラー(NOLM)のファイバの分散特性を非対称としたNOLMのスイッチング特性を解析し、従来のNOLMよりも消光比およびスイッチングしきい値の点で優れた特性を有することを示した。 ・能動モード同期ファイバレーザを分散マネージメントした場合の、出力パルスの時間ジッタおよびエネルギージッタを理論計算と数値シミュレーションによって求め、これらの分散マネージメントの強さに対する依存性や、変調器や光フィルタの位置によって両ジッタが大幅に低減できることを明らかにした。 ・正常分散ファイバを伝搬する非線形光パルスの整形作用を利用した新しいRZ光受信器を提案した。12,000km伝送後の10Gbit/s光ソリトン伝送の受信部に適用して、位相余裕とともに振幅余裕が大幅に拡大することを実験で示した。
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