本研究では、コンクリート橋脚の軸方向にプレストレスを導入して地震時のひび割れ発生を制御することに着目し、この構造の耐震的な特徴を定量的に求めることとした。供試体には、軸方向にプレストレスを導入したフーチング付き独立柱(PC橋脚)を用い、静的正負載荷と準動的地震応答載荷実験を行った。本研究により得られた主な結果を示すと次の通りとなる。 1. アンボンド方式のPC橋脚は、コンクリート強度に対する全軸方向圧縮応力度が概ね25%以下であれば、従来の鉄筋コンクリート橋脚と同程度の靭性率を有することが明らかとなった。また、PC橋脚の残留変位は、同じ外軸応力を載荷した鉄筋コンクリート橋脚のそれの半分から1/5程度であり、曲げ耐力に占める軸方向鉄筋の分担率が低いほど小さくなる傾向が示された。 2. 中空断面PC橋脚は、柱基部の断面形状の違いにより大きく異なった地震応答挙動を示した。柱基部の中実と中空の断面急変部をID(D:断面高さ)としたり、D/2であっても基部補強筋を加えるなど断面剛性に十分に配慮して設計することにより、中実断面と同様に優れた耐震性能を持つことが明らかとなった。 3. PC橋脚は、エネルギー吸収性能が低いからと言って、一概に耐震的ではないと言うことではなく、PC橋脚はコンクリートのひび割れや鉄筋の降伏により剛性が大きく変化するため固有周期が長期化し、それによって地震波との共振が避けられ耐震的な地震応答を示すことが確認された。 4. 常時偏心鉛直荷重が作用する橋脚にプレストレスを導入する場合には、偏心曲げモーメントの大きさに応じてプレストレス導入量を偏心側とは逆側に適切に増やすことにより、残留変形抑制効果の増大および偏心側への変位卓越の抑制が期待できる。
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