人間内部に構築される環境のイメージや意味づけ、環境と行動の相互的関係性を明示することを基軸に研究を行った。 平成9年度の研究では、(1)患者と職員の行動・認知を通してみた医療・福祉施設の評価(2)児童の行動・認知/グループの挙動を通してみた学校(3)都市空間における生態学的行動と環境の意味付けの関連が大きな柱である。 (1)においては、HOSPITAL GEOGRAPHYの知見を活かし、模擬病室を用いて集中治療室での医療・看護作業空間の分析を通した。また、全居室が個室の特別養護老人ホームでの入所者の身の置き方を考察することによる、共用空間に対する行動・認知を研究した。(2)では、小学校の建築計画について、校舎への意味付けと愛着形式の過程としての児童のプレイス・アタッチメント形式を研究、さらに児童個別の空間・場所体験の記述を通して、小学校環境の認識を明らかにした。(3)では、より広域的な視点から、特定の目的を与えられていない歩行を対象とした散策行動の構造を明らかにし、歩行目標の設定から達成の過程を分析した。学生の生活活動分析からみた大学と周辺環境の有機的な繋がりの分析では、距離による生活圏域の性質と行動の考察を行った。 人間の行動は物理的環境から得られる情報以外に、内的に形成されるイメージを動員して次の行動に移るということが、ビルディングタイプを横断する今回の研究では明らかになった。
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