研究概要 |
種結晶を用いた溶融法によりc軸配向させたREBa_2Cu_3O_<7-d>(以下123相)擬似単結晶は77Kにおいて1テスラ級の磁束を捕捉出来る上にさらに低温にすることでもっと高い磁場を発生出来る。このような超伝導永久磁石の性能は材料の組織制御をさらに進めることで最高の性能を持つ従来の永久磁石Nd-Fe-Bの10倍以上の高い磁場を発生させる可能性を秘めている。本研究は、3-5テスラの外部磁場を発生出来る超伝導永久磁石の開発とそれをパルス磁場を用いて着磁する研究を展開することを目標とした。 平成9年度は溶融バルク超伝導体の創製とパルス磁場による磁束線の運動のダイナミックスの解明を行った。パルス磁場では、静磁場とはまったく異なる磁化曲線を生ずることを見出した。パルス磁場が低い間は、磁束はゆっくり侵入するが、約2-4テスラを越えると磁束は超伝導体に急激に侵入することを明らかにした。このユニークな現象の解明によりパルス磁場による磁束線の粘性運動とピン止め機構に関する重要な知見を得た。さらに、211相を種々の形態に分散させ組織制御したY123-、Sm-123,Nd123-相擬似単結晶の創製することに成功した。 平成10年度にはSm-123溶融バルク超伝導体にAgを微細分散させることでその機械的強度を高め、77Kにおいて1.7テスラ、さらに25Kにおいて9テスラの磁場を発生させる超伝導永久磁石の創製に世界で初めて成功した。これはNd-Fe-Bの30倍の性能であり新聞に報道された(平成10年3月27日付け中日新聞夕刊)。この世界最高の超伝導永久磁石をパルス磁場で着磁するための基礎研究を行ない、3-5テスラの磁場を簡単に発生する超伝導永久磁石発生装置の開発へ大きく前進することに成功した。
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