軽量耐熱材料としてのTiAlの高強度化、微細組織安定性と疲労変形ならびに破壊挙動に及ぼすメゾスコピック分散相の役割について調べた。本研究によって得られた主要な研究成果は次の通りである。 (1)TiAlの交番応力負荷条件下においてγ相中の普通転位は往復運動し、その際高密度転位集積組織(Vein)を形成し、著しく疲労硬化する。また、γ相中のドメインならびにα_2/γ相界面は転位に強い運動抵抗を与え、疲労硬化を助長する。 (2)γ相中のドメインの種類に依存してPSBが形成され、これが疲労クラックの起点として働き、疲労破壊を誘発する。このPSB形成は双晶の発生と深く関わり、Nb等の積層欠陥エネルギーを増加させる合金元素の添加は双晶の発生を抑え、疲労寿命の改善をもたらす。 (3)層状組織の微細化は降伏応力等の静的強度増大、靱性の改善をもたらすのみならず、層界面がクラック伝播抵抗を増加させるため、疲労強度改善をもたらす。 (4)Al-rich TiAl合金には、γ相中にL1_0型構造と類似のAl_5Ti_3、r-Al_2Ti、h-Al_2Tiなどの微細な析出物が現れる。これら化合物相をメゾスコピックに分散させることにより、高温強度、クリープ強度改善が達成できる。 (5)Al_2Ti、Al_5Ti析出物中を転位が通過する際に、普通転位と云えども逆位相境界(APB)を形成し、このAPBエネルギーは超格子転位が作るAPBより大きいエネルギーを持つため析出物は強い運動抵抗を与え、強度上昇をもたらす。 (6)h-Al_2Ti、Al_5Ti_3は母相のL1_0相と極めて良好な整合性を保つ。そのためメゾスコピック分散相として存在し、熱的にも安定である。
|