研究分担者 |
濱田 泰輔 熊本大学, 工学部, 助手 (10253717)
杉本 学 熊本大学, 工学部, 講師 (80284735)
西山 勝彦 熊本大学, 工学部, 講師 (10202243)
松本 泰道 熊本大学, 工学部, 教授 (80114172)
谷口 功 熊本大学, 工学部, 教授 (90112391)
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研究概要 |
新しい光学活性なルテニウム(II)ビピリジン誘導体,[Ru(menbpy)_3]^<2+>,及び銅(I)ビピリジン誘導体,[Cu{(-)-tmdcbpy)(PR_3)_2],を合成することに成功した。これらの錯体は優秀な光増感剤に必要な条件、即ち、可視あるいは近紫外光の効率良い吸収、3重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)励起状態の寿命が長いこと、しかも、励起状態酸化還元電位は十分卑であること(各々-0.7V vs. SCE)などの条件を満たしている。 これらを用いて、[Co(acac)_3]及び[Co(edta]^-の立体選択的光化学的還元反応を行い、以下の通り興味深い結果を得た。(1)[Cu{(-)-temdcbpy}(PR_3)_2]^-を光増感剤とした場合、[Co(edta]^-の還元反応は効率良く進行し、反応後Δ-[Co(edta)]^-の過剰の存在が認められた。即ち、Λ-[Co(edta)]^-が優先的に還元されており、立体選択的な光化学反応系の確立に成功した。(2)光学分割した[Co(edta)]^-による消光反応を行い、反応は静的消光機構で進行すること、消光過程での立体選択性は見られないこと、従って、電荷分離過程で立体選択性が発現していることがしめされた。(3)[Ru(menbpy)_3]^<2+>を光増感剤に用いた場合、[Co(acac)_3]も[Co(edta)]^-も効率良く還元された。いずれの還元でもΔ-[Co(acac)_3]、Δ-[Co(edta)]^-が優先的に還元された。これらの場合は動的消光機構で進行し、消光過程での立体選択性は極くわずかであり、電荷分離過程で立体選択性が発現していることが確かめられた。 以上の成果は、J. Chem. Soc., Dalton Trans.に論文として公表され、Bull. Chem. Soc., Jpn.に投稿中である。また、配位化合物の光化学討論会、錯体化学討論会、12th International Symposium on Photochemistry and Photophysics of Coordination Compoundsなどで公表され、内外から多くの興味を示された。
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