研究概要 |
本年度では,フッ素化合物の電気化学的あるいは有機金属化学的活性化ならびに,トリフルオロプロペンオキシドの合成中間体としての活用を中心に研究した。 1.電気化学的な活性化によるジフルオロエナミン等の合成 ジフルオロイミンおよびジフルオロケトンを塩化トリアルキルシラン存在下で電気化学的に還元することにより,ジフルオロエナミン,ジフルオロシリルエノールエーテルを各々好収率で合成する方法を開発した。本手法により初めて,トリフルオロメチルイミン,ケトンよりジフルオロオレフィン類の合成が可能になった。次年度は,この反応の一般性と実用性の可能性を追求する。 2.ハロゲン化トリフルオロアセトイミドイルパラジウム錯体の合成とX-線構造解析 N-アリールハロゲン化トリフルオロアセトイミドイルパラジウム錯体の単離とX-線構造解析に成功し,その構造はアリール基とパラジウムが炭素-窒素二重結合に対し,シスの立体配置にあることを明らかにした。この錯体と一酸化炭素押入錯体の単離を進めている。この錯体の単離により,パラジウム触媒反応の中間体が明らかとなり,今後,より効率の良い触媒反応の設計の指針を得た。 3.トリフルオロプロペンオキシド(TFPO)の炭素陰イオンによる開環 シアノ基により安定化されたカルボアニオンによる開環法を確立した。また,トリフェニルフォスフィン-ハロゲン複合体により活性化し,立体特異的分子内S_N2反応により,トリフルオロメチルシクロプロパン,および光学活性トリフルオロメチルアジリジンの合成に成功した。
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