研究概要 |
不飽和結合をもつ複数の基質相互間に,複数の結合形成を高い選択性をもって進行させ,合成化学的に付加価値の高い環状分子骨格を一段の反応操作で構築できる斬新な錯体触媒反応の開発を目的として,平成9年度より研究を実施してきた.平成11年度は,その最終年度であり,下記の研究成果を挙げるとともに,3年間にわたる研究成果全般にわたり取りまとめを行った. (1)1,6-ジインから生成するルテニウム・メタラシクロペンタジエン中間体を経由した,アルキン類とのメタ位選択的交差カップリング,ならびに環状アルケン類との前例の全く無い2種類の新規ドミノ付加環化を創出した. (2)ロジウムカルボニルクラスター触媒を用いるヒドロシラン,一酸化炭素,アミン類の4成分1段階カップリングを達成した. (3)エニン類,ヒドロシラン,一酸化炭素の3成分からロジウム触媒を用いシクロペンチルアセトアルデヒド骨格合成を実現した. (4)プロパルジルアルコール類またはアルキニルアミンの環化カルボニル化により,複素環骨格の短工程構築をロジウム錯体触媒存在下に可能とした. (5)シリルイリジウムカチオン錯体を用い,シリルエノーエーテルのアリル位アルキル化,Michael付加,交差アルドール反応を触媒的に中性条件下に進行させることに成功した. (6)パラジウム(0)錯体をもちいる,電子欠損性置換基をもつ1,6-ジインの交差カップリングとトリインの分子内環化三量化に成功し,触媒活性をもつPb(0)トリイン錯体の単離と構造決定に成功した. (7)常磁性遷移金属錯体により誘起されるラジカル環化の方法論を活用し,ケトーニトリル・カップリングに成功し,ジアール類のtrans選択的ピナコール型環化カップリングを触媒条件下に実現した. (8)研究成果の全般的な取りまとめを行った.
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