本研究は、地球大気圏再突入飛行体周りに発生する衝撃波加熱問題に関連して、自由ピストン2段膜衝撃波管を用いて形成される低圧空気中の強い衝撃波背後の熱化学非平衡流れに対して、紫外光領域で検出可能な高速分光光観測システムと全放射検出可能な観測システムの同時計測系の構築・測定を行なった。研究の経過と実績を以下に示す。 1)自由ピストン2段膜衝撃波管特性に関する研究:MUSES-Cなど、高速度の再突入飛行体速度に対応する、12km/s付近の高速度衝撃波面を的確に形成し計測を行なうために衝撃波管特性の実験を行なった。その結果、衝撃波速度6.8km/s〜12.5km/sの広い範囲に渡る繰り返し実験を±1%の誤差で再現性良く行なうことを可能とした。 2)画像分光システムによる衝撃波面背後の分光観測:波長範囲300〜445nmの時間分解画像分光観測を行ない、その観測結果より、波面背後の非平衡空気気体種および不純物分子種からの発光を解析することができた。 3)画像分光と全放射発光の同時計測:冷却型IICCDカメラシステムにより時間分解画像分光観測と時間凍結全放射発光の同時計測を行なうことができた。その結果、衝撃波速度による発光プロフィール(1峰性・2峰性)の相違に、特定の気体分子種からの発光と原子種からの発光が関与していることを解明した。また管壁近傍の3次元境界層発光を観測し、その影響を解明することができた。 本研究の遂行により上記の項目全体に渡って観測データ精度の向上がなされたが、衝撃波管低圧管の制作による試験気体純度の向上および放射強度の絶対値測定などは次年度以降の問題となった。
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