研究概要 |
ジーンプール形成機構として1)雑種不稔遺伝子の候補領域の絞り込み、2)一方向性交雑不親和性の遺伝的複雑性、3)ポリジーンと発育様式について実験を継続した。 1)もち遺伝子に0.15cMで連鎖する雑種不稔遺伝子S10の候補を、もち遺伝子近傍300Kbをカバーするコンティグ上に位置づけるために、葯発現転写マップを作成した。両親間における葯発現のcDNAの発現比較と連鎖関係から、もち遺伝子葯10Kbに下流に位置するcDNAが第一の候補と考えて、現在配列の比較することを開始している。 2)第6染色体単腕上には、一方向性交雑不親和性を支配する3つの遺伝子(Cinf,Su-Cinf,cinm)が存在する。本年は、これら遺伝子の分布をアジア・アフリカ栽培イネと野生イネで調査した。2つの遺伝子(Su-Cinf,cinm)は雑種不稔遺伝子S6と密接に連鎖すると考えられ、これら複合体を解析するために第6染色体単腕に関する自殖組換体の作成を急いでいる。現在までに、この遺伝子複合体は動原体近傍の単腕上に位置することがRFLP分析によって明らかとなった。 3)出穂性ポリジーンは生殖隔離機構としても重要である。過去に複数の研究者によって作出された出穂性遺伝子に関する準同質遺伝子系統を用いて発育様式を詳細に比較した。モジュール構造をもつイネでは、繰り返し構造の発育様式が出穂性遺伝子から予測可能であることが判った。第6染色体単腕上には複数の出穂性遺伝子が複合体を形成しており、これら遺伝子の組み合わせによって発育様式が変更を受けるようである。
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