研究概要 |
1. カイコへの遺伝子導入の際に,マーカーとして利用可能と思われる,オモクローム色素の生成に関わる遺伝子群のひとつである,キヌレニンモノオキシゲナーゼ遺伝子を単離し,塩基配列を決定したところ,この遺伝子が卵色の突然変異である第1白卵の正常遺伝子である可能性が濃厚となった。さらに,別の卵色突然変異である第2白卵の系統を用いて,これ以外のオモクローム色素合成系酵素の遺伝子の探索も行った。 2. カイコのランダム増幅多型DNA(RAPD)を利用して,いくつかの遺伝子の所属連関群を調査したところ,キヌレニンモノオキシゲナーゼ遺伝子,ショウジョウバエの白眼遺伝子の相同遺伝子,エクジステロイド受容体遺伝子や,エクジステロイドに対する初期応答遺伝子のひとつなどが,いずれも第1白卵や第2白卵と同じ第10連関群に占座することが明らかになった。 3. カイコのZ染色体上の遺伝子の発現量を雌雄で比較した結果,雄では雌の約2倍のmRNAが検出され,少なくとも調査した範囲では,カイコにおいて遺伝子発現の量補正が存在しないことを明らかにした。また,人為的に誘発した3倍体のカイコにおいても,遺伝子量にほぼ比例したmRNAが転写されていることが,複数の遺伝子で確認できた。 4. カイコの5齢幼虫後期に核多角体病ウイルスを接種し,ウイルスの増殖および病蚕の死亡率を調査したところ,接種後一定期間内のカイコの死亡率には,接種時期によって若干の差がみられ,ウイルスに対する抵抗性の存在が示唆された。 5. 性染色体上に転座染色体をもつカイコの限性系統から,染色体の再転座によるものと思われる変異個体を複数分離し,これらの形質を支配する遺伝子のうち,第5連関群上のものを2つと,第6連関群上のもの1つを確認し,それらの座位をほぼ決定した。
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