研究概要 |
ゼニゴケ雌および雄ゲノムPACライブラリーを完成した。50kb以上のDNA断片をもつクローンが、雄株では32,800個、雌株では31,700個得られた。オルガネラゲノムの含有率が約30%と見積もられているので、雌雄それぞれ約22,000個の核ゲノムDNA断片をもつクローンが含まれていることになる。ゼニゴケのゲノムサイズは核型分析の結果280Mbと推定されているので、性染色体を含めてゲノムの99.9%をカバーするには、平均90kb以上の核ゲノム挿入断片を持つPACクローン約20,000個が必要である。従って、今回得られたそのようなPACクローンの数は雌雄共に十分である。 上記のライブラリーより高密度フィルターを作成し、雌および雄ゲノムDNAをプローブとしたディファレンシャルスクリーニングによって雄特異的DNAを含むPACクローンpMM4G7を単離した。pMM4G7をプローブとして雌および雄ゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションを行うと、雄ゲノムDNAのみで2.5kbの位置に強いシグナルが観察された。また、pMM4G7を用いて雄の染色体サンプルに対してFISHを行い、Y染色体にシグナルを得た。従って、pMM4G7はY染色体に由来することが確認された。pMM4G7のBamHI断片をランダムにサブクローン化し、得られたサブクローン5種類について挿入断片末端の配列を決定したところ、全て異なるサブクローンであるにも関わらず、それぞれの末端配列は非常によく保存されていた。さらに、pMM4G7のBamHIによる切断地図を部分的に作成した結果、pMM4G7にはBamHI切断部位を持つ反復配列が多数存在していることを明らかにした。 ゼニゴケ生殖器官で発現している遺伝子群に関する知見を得るため、EST(expressed sequence tag)解析を行った。雌生殖器官由来715種類、雄生殖器官由来446種類のESTsを比較すると、雌雄に共通する配列102種類、雌のみで見られた613種類、雄のみで見られた344種類に分類できた。
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