研究概要 |
春に出現する昆虫類にとって、食物となる植物のフェノロジーとの一致はきわめて重要である。今回の研究対象としているモミジニタイケアブラムシはとくにようであって、カエデ類の冬芽の発育に合わせて孵化する必要がある。 カエデ類の冬芽の発育の観測のうち、データのそろっているオオモミジとイロハモミジの13年間の観測値の解析をおこなった。その結果、開芽の早い林内のオオモミジ、開芽の遅い日向のオオモミジ、イロハモミジというように種やフェノロジーの異なる11本のカエデ類のすべては、(1)開芽に必要な積算温量が冬期間の東京の平均気温で5℃以下の日数によって決定されること、(2)開芽に必要な積算温量とは平均気温で5℃以上、8℃以下以下の狭い範囲の温量であることを明らかにすることができた。開芽に必要な温量の上限値の存在を具体的に明らかにできたこと、その閾値が東京の平均気温で8℃という低い温度であること、こうした事実は長期間にわたる観測によってはじめて解明できることであるが、これは新たな、きわめて重要な発見であると考える。気候変化と植物のフェノロジーの関係において、また昆虫類の動態において意味するところは大きい。(2000年4月,日本林学会大会で発表予定) その他、具体的な食物条件を土壌含水率、窒素含有率との関係から、またアブラムシの孵化に与える温度の影響を実験している。
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