研究課題
古くから行われている水中貯木処理によって、木材の乾燥性や水分透過性が改善される理由を科学的に究明してメカニズムを明らかにすることにより、難乾燥材とされるスギ材の実用的な乾燥前処理技術を開発することが、本研究の目的である。そのために、本年度はいかの点を検討した。(1) 乾燥性の検討:3ヶ月問および6ヶ月間の手中貯木処理を行ったスギ丸太材について、乾燥速度、乾燥による狂いおよび割れなどの損傷発生程度を確認し、無処理材との比較を行った。その結果、3ヶ月処理で狂いの減少効果が、6ヶ月材では乾燥速度の向上が認められた。(2) 水中微生物の生態的観察:乾燥性の検討に使用した材について、昨年と同様の処方を用いて水中貯木処理期間の長さと微生物の生態的な消長を追跡した。特に木材細胞の形態的変化の進行度合いと水分通導性向上との関連について検討した。(3) 強度性能の確認:長期間の水中貯木処理が材質劣化におよぼす影響を確認するために、上記の処理材の静的曲げ強度、曲げ衝撃強度および圧縮強度を測定し、3ヶ月および6ヶ月処理材にはそれらの劣化が見られないことを確認した。(4) 処理による色調変化の確認:上記の処理材について、長期間の水中貯木処理が材色の変化の有無を検討した。とくにスギ材特有の赤紅色の心材が、処理によって暗色系に劣化する現象がいつ生じるかが問題になるが、6ヶ月では心材色はむしろ改善されることが確認された。(5) 散水貯木処理の実用性の検討:水中貯木の簡易法として、地上においてスプリンクラーで散水して、その効果を水中貯木材と比較した。その結果、散水貯木処理は水中貯木よりも効果の発現が遅れることが確認された。
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