研究概要 |
アジアの多国籍アグリビジネスは、海外投資によって食料貿易を企業内部の取引へ内部化し、新しい農業・資源開発の推進力となっており、環境保全・食料安全保障との調和が求められる。本研究はJ.H.DunningのOLI仮説の観点から、多国籍企業と政策との相互作用、両者の利害の対立と依存について分析した。本年度は、開発途上国3ケ国(タイ、中国、さらにインドを追加)、及び先進国2ケ国(カナダ、日本)を重点的に解明した。 1, タイにおけるエビ産業の多国籍アグリビジネスと持続的開発:(1)日系資本による水産業への海外投資を分析し、技術・経営・市場スキルの国際転移のメカニズムを解明した。(2)環境資源の濫用や収奪を克服するため、地球環境の保全に配慮し、社会的に受容され、経済的にも自立するシステム構築について提起した。 2, 中国における日系食品加工企業の海外投資戦略:(1)日系企業は野菜・果樹部門の開発輸入のため、海外投資をして合弁企業の生産拠点を構築し、原材料の調達をはかっている。(2)これら企業は知的無形資産を基礎として優位性をもち、交渉力を発揮している。 3, インドにおける食料貿易と多国籍企業:(1)本年度から、インドを対象国に追加して、中央食料技術研究所(CFTRI)と研究交流を行い、食品加工業の国際化を分析した。(2)インド・カルナータカ州での国際食料学会(IFCON98)で招待講演をおこない、開発途上国産品の世界市場でのインパクトを解明した。 4, 【先進国】カナダのカノーラ植物油産業の多国籍企業:(1)アグリビジネスの多国籍化を、バイオテクノロジー・遺伝子組み替え作物の生産・加工・貿易のシステムとして解明した。 5, 日本:青森県相馬村のりんご産業の発達と地域づくりについて、下水道整備・住宅団地・リゾート開発等の環境保全型の地域開発政策の展開を解明した。
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