研究課題/領域番号 |
09306021
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩田 久人 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (10271652)
|
研究分担者 |
田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60116952)
数坂 昭夫 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (00002113)
藤田 正一 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10143314)
|
キーワード | ゴマアザラシ / クラカケアザラシ / チトクロームP450 / 環境汚染 / 水棲哺乳動物 / 異物代謝酵素 / 複合汚染 |
研究概要 |
今年度は、海洋生態系の上位に位置するアザラシの肝P450に着目し、その種特異性について理解することを試みた。 北海道積丹半島、および知床半島からゴマフアザラシ・クラカケアザラシを採取し、肝臓からミクロソームを調製した。このミクロソームを用いて、Alkoxyresorufin O-dealkylase(AROD)活性・Testosteronehydroxylase(TH)活性を測定し、さらにウエスタンブロット解析を行った。 AROD活性・TH活性の中でも、Ethoxyresorufin O-deethylase(EROD)と6βTHの活性が高かった。またラットと異なり、16β・2βTH活性も検出された。ウェスタンブロット解析では、抗ラットP450抗体により、ラットP4501A・2B・3A様タンパクが検出された。しかしながら、P4502Bタンパクは検出強度が顕著に低かった。P4501A・3A量とAROD活性・6β・16β・2βTH活性の間にはそれぞれ有意な正の相関があったが、P4502B量はどの活性とも相関がなかった。こうした結果を考慮すると、アザラシではラットP4501A・3A様分子種の活性が高いことがわかった。一方、アザラシにはラットP4502B様分子種は微量にしか存在せず、P4501Aおよび3A様分子種がそれぞれラットP4501A・3A依存的な活性の他に、P4502B依存の活性にも寄与していることが示唆された。さらにアザラシP450活性は、性・成長段階によって変動していた。成長に伴い、EROD活性は雄では高く、雌では低くなる傾向が認められた。この成長にともなうアザラシ雌雄の活性値の変動パターンは、難分解性環境汚染物質の生体内蓄積量の変動パターンと類似していた。このことから、アザラシP450の一部分子種の活性値変動には、難分解性環境汚染物質による誘導が関与していると推察された。
|