研究課題
基盤研究(A)
本研究の結果、得られた成果は以下のようである。(1)本州を対象とし新たな指標CONを用いて森林連続性を評価し、さらに陸生哺乳類の分布との対応を解析した。この結果、ツキノワグマ・ニホンカモシカなどはCON値の高い森林に出現し、タヌキ・キツネなどは低い森林に多く出現することがわかった。また、日本列島を9つに区分し、それぞれの森林グリッド率とCONを比較した結果、とくに中国地方における森林分断化が示唆された。さらにCONと自然地理的要因との関係から、森林連続性は地形的要因の影響を強く受け、とくに山地を中心として、開発圧の低いところに連続的に分布していることが示された。(2)兵庫県氷ノ山地域に生息するツキノワグマを対象にラジオテレメトリ調査を行い、その生息位置を把握した。GISを用いた解析の結果、ツキノワグマの季節的かつ年次的に変化する行動圏、行動パターン、利用する植生などが明らかにされた。(3)宮城県金華山島に生息するニホンジカ雌一頭、東京大学秩父演習林と兵庫県氷ノ山地域に生息するツキノワグマ雄各一頭を捕獲し、GPS首輪を装着した。回収された位置情報とデジタル植生図との重ねあわせにより、利用植生を明らかにすることができた。野生動物に装着されたGPS首輪の回収は日本初の事例であった。(4)1998、1999年に沖縄県西表島と石垣島にてサシバを捕獲し、衛星追跡用送信機を装着した。この結果、越冬地から繁殖地までの渡りの経路が明らかにされた。渡りは島を中継地として利用し、休息と移動を繰り返す様式であることがわかった。また石垣島での生息・分布調査の結果、採食やねぐらには、森林よりも農耕地を多く利用していることがわかった。繁殖地から越冬地までの経路を明らかにするため、千葉県我孫子市で装着された送信機は、途中で電波が途絶えたが、通常より一ヶ月遅れても渡りを行うことが確認された。
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