つくば高血圧マウス(THM、レニン・アンギオテンシン(RA)亢進型高血圧マウス)の血管状態を生理学的および組織学的に解析した。若齢のTHMは、すでに生体と同様にRA系の亢進による高血圧を発症し、その血管壁は血管平滑筋細胞(VSMCs)の形質転換による血管リモデリングを生じており、大動脈血管壁の肥厚が観察された。このTHMに食塩を投与したところ、血管病態が進展して激しい大動脈瘤を発症し、血管の破裂による投与早期の死亡個体が観察された。これらのことから、高血圧状態にあるTHMへの食塩投与は、血管病態を進展させ、さらに、メカニカルストレスが関与して大動脈破裂に至る可能性が示唆された。 一方、つくば低血圧マウス(アンギオテンシノーゲン遺伝子欠損マウス)のコンジェニック型では、生後7日以内に死亡するマウスが続出した。特に、ホモ欠損マウスで高い死亡率が観察された。新生仔マウスの腎臓を観察したところ、ホモ欠損マウスでは腎臓の形態形成に異常がみられた。新生仔マウスにおける腎臓の形成不全から、新生仔の死亡は水・電解質の代謝異常により脱水が起きるためと仮説を立て、生後1週間にわたり生理食塩水の皮下投与による処置を試みたところ、死亡率の著しい回復がみられた。これらのことから、RA系の機能不全により、マウス胎仔の腎臓形成不全が生じ、新生仔マウスは水・電解質代謝異常により死亡するが、食塩処置により生存し、その後の発育も可能であることが明らかとなった。
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