重要機能受容体の網羅的共役G蛋白マッピングとしては、まず第一に、ソマトスタチン1-5受容体のマッピングを終了した。その顕著な成果は、ソマトスタチン5受容体がG12ファミリーにのみ共役するという知見であり、今後5型受容体を用いて生体におけるG12ファミリーの役割が明確になると共に、細胞死誘導受容体としてソマトスタチン5受容体を遺伝子治療に用いることが可能となると予想される。更に、肺癌の誘導因子としてのGRP受容体の共役マッピングと、気管支喘息や動脈硬化誘導の主要な因子であるトロンボキサン受容体αとβの共役マッピングを明らかにした。とりわけ、後者の研究からは、トロンボキサン受容体βのC端領域にG12活性を選択的かつ特異的に抑える機能が存在することを発見した。この知見から、従来不可能とされてきたG12ファミリーG蛋白であるG12とG13の選択的活性制御が可能となり、制癌、とりわけ、エイズ随伴症であるカッポージ肉腫の制御、あるいは動脈硬化症の発症阻止等に大きく貢献すると考えられる。その他、アンジオテンシン受容体、ラトロトキシン受容体を含む複数の共役G蛋白マッピングを実施中である。第2に、セクレチンファミリーの代表としてのカルシトニン受容体のG蛋白共役ドメインのマッピングを達成した。カルシトニン受容体の部分配列を使って、全長の受容体と等しい機能を実現する可能性をもたらした。第3に、G蛋白サブユニット、とりわけ、Gβサブユニット遺伝子の選択的破壊マウスを作成する目的で、マウスGβゲノム遺伝子をクローニングした。これまで、Gβ2ゲノミック遺伝子の全配列とエクソン、イントロン構造を明かにした。マウスGβ2ゲノム遺伝子は9つのエクソンからなる。これは、Gβゲノム遺伝子の世界初の構造の同定である。現在Gβ2ゲノム遺伝子を破壊したES細胞の作成を終了し標的破壊マウスを作成中である。
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