研究概要 |
本研究は,新しく開発した遺伝子操作系を用いて、非分節型マイナス鎖RNAをゲノムにもつセンダイウイルスに任意の変異を導入し、ウイルスの転写と複製に必須のウイルス遺伝子中のシス要素を同定すること、未知遺伝子の機能を明らかにすること、および、センダイウイルスゲノムに外来遺伝子を連結し発現する新規発現ベクターとしての可能性を検討することを目的としている。本年は、未知遺伝子産物のひとつ、C蛋白について、その発現を欠くウイルスの性質を詳細に解析した。C蛋白は、野生型ウイルスでは、C1,C,Y1,Y2の4種の蛋白群として生成される。これら4種の蛋白すべてを欠くウイルスでは、ウイルス成熟過程が円滑に行われないこと、宿主のインターフェロンα/βに抵抗することができないことがわかった。すなわちC蛋白はウイルス成熟と抗インターフェロン能という少なくとも2つの機能を有することを明らかにした。この外に、転写の開始と終止に働くシスシグナルを同定した。各遺伝子の先頭にある転写開始シグナルは相同性が高い。しかつ、4種のバリエーションがある。これらの4種の転写活性を、下流にルシフェラーゼをコードするリポーター遺伝子を配して比較したところ、第4遺伝子であるF遺伝子の開始シグナルのみが有意に低い活性をもつことがわかった。すなわちセンダイウイルスの転写は下流に向けて2相性にダウンレギュレートされるものと考えられた。センダイウイルスの第一遺伝子N遺伝子の前に外来遺伝子を挿入する為のクローニングサイトを創出したのち、lacZなどの各種外来遺伝子を挿入、発現させることに成功した。15.3kbのウイルスゲノムに少なくとも3.2kbの外来遺伝子を挿入し、安定に維持発現できることを明らかにした。
|