研究概要 |
平成9年度は,樹状細胞(DC)を用いた免疫療法(特に自己反応性T細胞のanergyの誘導)についてのin vitroでの基礎的実験と対象疾患における抗原特異的な自己反応性T細胞または細胞障害性T細胞の検討を行った。 DCの免疫調節機能を調べるため,まず強皮症患者からトポイソメラーゼI(トポI)を認識する自己反応性T細胞クローン株を樹立した。これらトポI反応性T細胞クローンをT細胞エピトープを含むペプチドとともに各種抗原提示細胞と培養し、自己反応性T細胞のanergyの誘導を検討した。抗原提示細胞として,自己末梢血より分離したDC,単球,B細胞,GM-CSFで活性化させたDCを用いた。その結果,HLA分子を発現するがcostimulatory分子を欠如する末梢血中の未熟なDCは,抗原存在下で抗原特異的なanergyを誘導することを確認した。 対象疾患の中で,今年度は自己免疫性血小板減少性紫斑病(AITP)と多発性骨髄腫について検討した。AITP患者の抗血小板抗体の認識する主要な抗原である血小板膜表面糖蛋白GPIIb-IIIaをアフィニティーカラムで精製し,これら精製抗原を用いてAITP患者末梢血中にGPIIb-IIIaと反応するT細胞の検出に成功した。現在,GP-IIb-IIIa反応性T細胞クローン株の樹立とT細胞エピトープの同定を行っている。多発性骨髄腫では,患者骨髄から得られた骨髄腫細胞の免疫グロブリン遺伝子の解析を行い,リコンビナントの可溶性Fab鎖の発現に成功した。骨髄腫細胞を標的としてT細胞の特異的増殖反応を確認しており,現在活性化DCとFab鎖を用いて細胞障害性T細胞の誘導を試みている。
|