本年度も樹状細胞(DC)を用いた抗原特異的な免疫抑制による自己免疫疾患の治療を中心に検討を進めた。免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、重症筋無力症(MG)を対象とし、各疾患における病因的T細胞の検出およびその解析を継続した。さらに、これまでの検討から末梢血中の未分化なDCが自己反応性T細胞の選択的anergyを誘導することが明らかになっており、免疫療法への応用を念頭におき今年度は未分化DCの効率のよい回収法についても検討した。 ITPでは抗血小板抗体の主要な抗原である血小板膜蛋白GPIIb-IIIaと反応するT細胞、APSでは抗リン脂質抗体の対応抗原であるβ2グリコプロテインIと反応するT細胞、MGではアセチルコリン受容体と反応するT細胞を検出するin vitroの系を確立した。ITPとAPS患者からは抗原特異的T細胞クローン株の樹立に成功し、多くのT細胞株がB細胞からの自己抗体産生を誘導するヘルパー活性を有しており、病態と関連することを見出した。 末梢血中の未分化DCは回収率が低く、10^7個の特異的T細胞のanergyを誘導するのに十分な数を得るのに末梢血200ml以上が必要であった。そこで、今年度はフローサイトメトリーによるソーティング、磁気結合モノクローナル抗体などを組み合わせて回収率の改善を試みたが、よりよい分離法は見いだせなかった。したがって、末梢血からの分離より造血幹細胞からの誘導について検討する必要があり、来年度への課題とした。
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