研究課題/領域番号 |
09307011
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
池田 康夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00110883)
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研究分担者 |
桑名 正隆 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50245479)
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キーワード | 樹状細胞 / T細胞 / 自己免疫疾患 / 主要組織適応抗原 / 免疫療法 / 抗リン脂質抗体症候群 / 特発性血小板減少性紫斑病 |
研究概要 |
免疫担当細胞間の相互作用を人為的に操作し疾患を治療するという免疫療法は、従来の治療法が無効の疾患に対する新たな試みとして注目されている。本研究の目的は抗原提示細胞にひとつである樹状細胞(DC)を用いて自己免疫疾患に対する新たな治療法を確立することである。これまでの3年間の研究成果により、末梢血中のHLA-DR^+CD4^+CD11b^-のplasmacytoid DCまたはDC2の前駆細胞(pDC2)がT細胞の抗原特異的なanergyを誘導することが明らかになっている。pDC2は抗原を取り込みペプチドを主要組織適合抗原(MHC)上に提示するが、T細胞の活性化に必須なCD80、CD86などの共刺激分子を欠くためにT細胞の活性化を誘導できないだけでなく、T細胞をその後の至適な抗原刺激に対しても反応できない無反応状態(anergy)に陥れる。これまでモデル抗原として破傷風トキソイドや自己抗原であるトポイソメラーゼIを用いてきたが、今年度は自己反応性T細胞が病因的な役割を果たす特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、抗リン脂質抗体症候群(APS)を対象疾患とし、これら自己免疫疾患患者でpDC2を用いることで病因的な自己反応性T細胞のanergyを誘導できるかを検討した。 ITPでは抗血小板抗体の主要な対応抗原である血小板膜蛋白GPIIb-IIIa、APSでは抗リン脂質抗体の対応抗原であるβ2グリコプロテインIをパルスしたpDC2を末梢血T細胞と培養することで、これら自己抗原に対する特異的なanergyの誘導が可能であった。したがって、少なくともin vitroの系では抗原をパルスしたpDC2を用いることで自己反応性T細胞のanergyの誘導が可能であることが示された。今後、倫理的な問題が解決されれば難治性の患者に対するpDC2を用いた免疫療法を行う予定である。
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