研究課題/領域番号 |
09307019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
内分泌・代謝学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松澤 佑次 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70116101)
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研究分担者 |
中村 正 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90252668)
山下 静也 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60243242)
船橋 徹 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60243234)
西田 誠 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | 肥満 / 内臓脂肪 / 生活習慣病 / 動脈硬化 / adiponectin |
研究概要 |
肥満、特に腹腔内内臓脂肪の蓄積は糖尿病、高脂血症、高血圧等の生活習慣病や動脈硬化症等の発症の大きな基盤となっている。本研究では脂肪組織の分子生物学的特性を明らかにすることよって、脂肪蓄積が多彩な病態を発症せしむる分子機構を解明しようとするものである。私達は脂肪細胞が従来考えられていたような単なる受動的なエネルギー備蓄細胞ではなく、多彩な生理活性物質を合成・放出する分泌細胞であり、その中で特に内臓脂肪蓄積とともにおこるPAI-1やHB-EGFの過剰分泌が直接血管病の発症に結びつくことを示してきた。 本研究では私達が新たに発見したコラーゲン様分泌蛋白adiponectinと水チャネル分子であるaquaporin adiposeについてその生理学的意義、病態との関連を検討した。adiponectinは脂肪細胞特異的に合成・分泌され、血中に多量存在する血漿蛋白であるが、上記の因子とは異なり肥満者において血中濃度が低下しており、特に内臓脂肪蓄積とともに血中濃度の低下が認められた。血管内皮が傷害を受けると、血管壁に多量沈着し、内皮細胞への単球接着抑制、平滑筋増殖抑制作用を示した。またadiponectin遺伝子を解析し、冠動脈疾患症例に本遺伝子の変異が見出された。以上より本分子は抗動脈硬化作用を有し、過栄養による肥満ではadiponectin分泌不全が血管病発症の一因となる可能性が考えられた。 一方水チャネル分子であるaquaporin adiposeはグリセロール透過能を有し、絶食時に発現増加すること、aquaporin阻害能を有する水銀イオンでグリセロール放出が抑制されることから、脂肪細胞においてグリセロール・チャネルとして機能していることが示された。肥満モデルにおいては本分子の発現が増加し、グリセロール放出が亢進していた。内臓脂肪蓄積時には多量のグリセロールが門脈を介して肝臓に流入し、糖新生亢進に働き、これが内臓脂肪蓄積時の糖代謝異常に関与することが示唆された。 本研究により、肥満、特に内臓脂肪蓄積時には、種々の内臓脂肪発現遺伝子の調節異常や生理活性物質の分泌異常がおこり、これが様々な病態発症に関与することが明らかになった。
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