研究課題/領域番号 |
09307021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 久丸 東京大学, 医学部・付属病院, 助教授 (90181130)
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研究分担者 |
本田 浩章 東京大学, 医学部・付属病院, 助手 (40245064)
千葉 滋 東京大学, 医学部・付属病院, 助手 (60212049)
三谷 絹子 東京大学, 医学部・付属病院, 助手 (50251244)
小川 誠司 東京大学, 医学部・付属病院, 助手 (60292900)
佐々木 光 東京大学, 医学部・付属病院, 助手 (60282638)
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キーワード | 白血病 / Evi-1 / 核内蛋白質 / zinc finger / MAP kinase / JNK / ストレス刺激 / アポトーシス |
研究概要 |
Evi-1は2つのcluster(第1、第2zinc finger領域)に分かれたzinc finger構造を持つ核内蛋白質をコードする。Evi-1は正常の造血細胞ではほとんど発現を認めないが、ヒトの白血病において高発現をすることが知られており、造血細胞の悪性化に深く関与する遺伝子である。今回、我々はEvi-1がMAP kinaseの一つであるc-Jun N-term kinase(JNK)と結合し、その活性を阻害することを明らかとした。JNKは紫外線(UV)や浸透圧などのストレス刺激やTNF_などにより活性化されるが、Evi-1はこれらの刺激によるJNKの活性化を抑制した。その抑制には第1zinc finger領域が必要であり、その領域を介してEvi-1はJNKと結合した。JNKはSEK1などのMAPKKによってリン酸化を受けて活性化されるが、このJNKのリン酸化はEvi-1によって阻害されなかった。またEvi-1はJNKによってリン酸化を受けることはなかった。これらのことから、Evi-1は活性化されたJNKと核内で結合し、JNKによる基質のリン酸化を阻害すると考えられた。一方、他のMAP kinaseであるERKやp38の活性はEvi-1によって抑制されなかった。UVなどの細胞外ストレス刺激によるJNKの持続的な活性化はアポトーシスの誘導に関与することが知られているが、Evi-1はUV照射によるアポトーシスの誘導を抑制した。このことから、Evi-1が実際の細胞内において種々のストレスによるJNKの活性化を抑え、アポトーシスを抑制することが示唆された。これらの結果はEvi-1による細胞の悪性化のメカニズムの一つを明らかにするとともに、核内因子によるMAP kinaseの分別的制御という新たな機構を示すものである。
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