研究課題
基盤研究(A)
本総合的研究を始めるにあたり、第1回班会議において、本邦において小児の心臓移植・肺移植の臨床応用を実現するため検討項目について討議され、各分担研究者の研究課題を決定し、研究を開始した。小児心・胚移植の手術術式・保存法の検討については、肺保存においてEp4液が肺胞の水輸送能を保存すること(藤村)、Lazaroid類似物質が心臓の再潅流障害に有効であること(安井)、出血による停止心のviabilityの評価法として再潅流装置が有効であること(佐野)、ブタ生体肺葉移植後に肺葉の成長があまり認められないこと(和田)、生体肺葉移植の肺葉摘出法を気管支分枝様式から検討し中葉の合併切除の必要な症例があることが判明し、術前の分枝様式の評価が重要であること(三好)などのが判明した。小児心・肺移植適応基準の検討については、自施設・オーストラリアにおける先天性心疾患症例の心臓移植適応基準の検討し、Fontan手術後に心室駆出率低下、重度僧帽弁逆流、不整脈wを認める症例(failed Fontan/unreached Fontan症例)が適応と考えられること(岡田)、川崎病後心筋症の予後を検討し、心不全死、突然死した症例では心筋梗塞に伴う左室機能低下症例であり、このような川崎病症例は心臓移植の適応と考えられること(神谷)、自施設での心肺移植適応候補患者の分析し、先天性心疾患に伴う肺低形成、肺動脈低形成、肺高血圧、肺動静脈瘻症例が心肺移植の適応と考えられること(松田)が判った。小児脳死判定基準の検討については、自施設の小児脳死症例の検査結果の検討(満留)、米国における小児脳死症例の予後の検討(松石)を行い、年齢に応じた判定基準が必要であることが判った。また、適応基準を考える上で、本邦における小児心肺・肺心臓移植患者の実態調査を行うことが重要であると考え、日本小児循環器学会などの各種学会・研究会の行っている調査と協調した形で、心筋症(先天性心疾患に伴うものを含む)(加藤、門間)、肺高血圧の全国調査(佐地)、海外渡航小児心・肺移植患者の調査並びに海外での成績の検討(小池)を開始した。結果については、来年度報告する予定である。最後に、小児ドナープールを拡大する目的で、新生児ヒヒへのブタ心移植を行い、新生児ヒヒでは抗ブタ抗体が少ないために超急性拒絶反応からブタ心が回避されること(川内)が判った。