研究概要 |
1. 類人猿におけるbasic fibroblast growth factor(bFGF.FGF2)の骨形成促進作用 尺骨の骨幹部骨折に髄内釘を刺入したモデルを平成10年11月に鹿児島のサル実験施設(新日本科学)にて作成し、現在までに殆どのデータを採取している。骨折部にbFGFゼラチンゲル(200μg)および対照ゼラチンゲルを局所投与し、2,4,6,8,および10週目(剖検時)に、X線撮影、骨密度の測定を行った。また、剖検時に尺骨を摘出し、三点曲げ試験による骨折部の力学的強度の測定を行った。bFGFによる有意な骨折治癒促進効果が認められ、10週後には、骨折部において、対照より55%のBMCの増加、および27%のBMDの増加を認めた。力学的にもstiffness,最大荷重,破断エネルギーを有意に増加させた。今後、組織学的解析、採取血液におけるゼラチン抗体価の測定、骨代謝マーカーの測定を行い、来年度には臨床応用を目指したプロジェクトを開始する予定である。 2. bFGFの慢性関節リウマチ(RA)における関節破壊への関与 昨年報告した通り、多くの骨吸収性サイトカインの中でも、臥関節における関節破壊に関節液中のbFGFによる骨吸収促進作用が関与している可能性を示した。この結果は、英文雑誌Rheumatologyに掲載受理された。現在、アジュバント性関節炎モデル動物を用いて、bFGFの全身投与および関節内投与による抑制効果について検討中である。 また、このようなbFGFの骨吸収と骨形成の相反する効果発現のメカニズムについては、骨芽細胞系細胞を破骨細胞系細胞における受容体(FGFR1-4)の局在の差によるものと考えられ、局所の濃度に応じてその効果を発現することを、in vitroの培養系を用いた実験で明らかにしており、英文雑誌Journal of Bone and Mineral Researchに投稿中である。
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