研究概要 |
クローン化したラットノシセプチン受容体のcDNAをCHO細胞に導入することによりノシセプチン受容体を発現する細胞株を作成した。細胞株を用いて、ノシセプチン受容体を介する細胞内情報伝達機構を検討した。その結果、従来報告されているアデニル酸シクラーゼ抑制作用の他に、ノシセプチン受容体の活性化によりMAP(Mitogen-activated protein) ナーゼが活性化されることがわかった。ノシセプチン受容体によるMAPキナーゼの活性化にはチロシンキナーゼ、プロテインキナーゼC,フォスファチジルイノシトール3キナーゼが関与していることが明らかになった。MAPキナーゼは種々の転写因子の活性を燐酸化により調節することが知られている。従って、我々の得た知見はノシセプチン受容体活性化により遺伝子発現が変化する可能性を示したものである。さらにノシセプチン受容体をアゴニストで刺激するとホスホリパーゼA2の活性化が起こり、アラキドン酸が放出されることが明らかになった。この知見はオピオイド受容体の刺激によりアラキドン酸代謝産物であるプロスタグランジンあるいはロイコトリエンが産生され細胞機能が調節される可能性を示唆している。 最近、μオピオイド受容体に対する親和性の高い4アミノ酸からなる内因性ペプチド、エンドモルフィンが発見された。我々は、μオピオイド受容体をcDNA導入により発現させたNG108-15細胞を用いて、エンドモルフィンによって引き起こされる電気生理学的応答を検討した。その結果、μオピオイド受容体はエンドモルフィンによって選択的に活性化され、電位依存性Ca^<2+>チャネルの活性を抑制することがわかった。さらに、NG108-15細胞が本来発現しているδオピオイド受容体を介する電位依存性Ca^<2+>チャネル抑制の脱感作現象を詳細に検討し、βアドレナリン受容体燐酸化酵素の関与を示唆する所見を得た。
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