研究課題/領域番号 |
09307036
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
小栗 顕二 香川医科大学, 医学部, 教授 (40079934)
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研究分担者 |
谷口 吉弘 立命館大学, 理工学部, 教授 (70066702)
柴田 あきら 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40035556)
寺田 弘 徳島大学, 薬学部, 教授 (00035544)
金品 昌志 徳島大学, 工学部, 教授 (80035617)
末崎 幸生 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (80069484)
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キーワード | 麻酔薬作用機序 / site specific / non-site specific / 膜の極性 / 膜濃縮過程 / 両親媒性ドメイン / 構造水 / 膜蛋白質 |
研究概要 |
10月の補助金交付内定後短い研究期間であるため、研究打合せ会議を12月14日・15日に開き、従来から各研究分担者で行っている研究結果とその関連文献の渉猟によって、今後の研究の見通しを立てた。 麻酔薬が標的とする蛋白は神経伝達物質受容体等を主とする膜蛋白であるとするのが一般的である。少なくともこれら蛋白質の活性発現には多少ともコンフォメーション変化を伴う。このプロセスは(1)蛋白質の特定部位への薬物の特異的結合によるか、(2)なんらかの因子による二次的なコンフォメーション変化によるかの2つの可能性がある。膜蛋白質ではリン脂質の構造を修飾するならば蛋白質の活性も修飾されることになる。前者のsite-specific typeでは(1)Langmuir型の結合,(2)高濃度で結合が飽和値(サイト数)に到達、(3)競合型阻害薬の存在、(4)光学異性体の結合(活性)に大きな差、が主な特徴である。一方、後者のnon-site specific typeでは,結合は薬物の濃度に伴い上昇し、競合阻害薬は存在しない。膜蛋白質の場合は何れか一方のクライテリアのみを明確に満足させるような現象は必ずしも見られないのではないか(寺田)。膜を介する情報伝達を行う反応系ではリンクする要素が多く、酵素蛋白のような単純な形式をとらない。膜構成分子は脂質・蛋白質共に両親媒性である。しかし膜として配向すると、膜の部位によって極性が異なる。そこで麻酔薬の作用部位は作用(結合)場の極性に強く依存する。麻酔作用を持ちながら非極性物質のXeが膜界面付近の両親媒性領域と優先的に相互作用するというYan Xu & Pei Tangの研究結果からすれば麻酔薬作用部位は蛋白質においても"両親媒性ドメイン"と呼ばれる場所である(柴田)。吸入麻酔薬で「麻酔強度とoil/gas分配係数の積」より「麻酔強度とoil/gas分配係数とsaline/gas分配係数との積」に相関が強いことから、吸入麻酔薬の水への溶解度の19F-NMRによる定量的測定は重要である(谷口)。また既に解明されたとされる局所麻酔薬の作用機序について非解離型麻酔薬が麻酔薬作用機序の主役である実験事実を積み上げている(金品、横野、小栗)。このことは麻酔薬は水との平衡と同時に膜とも平衡にあり、膜への濃縮過程が受容体蛋白への結合の割合を規定している(末崎、塚本、金品、横野)。以上のような事柄が本研究の今後の方向性になる。
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