研究概要 |
ラット脊髄スライス標本における細胞内カルシウムイオン濃度測定を施行した.病的疼痛モデルとして,坐骨神経切断または坐骨神経結紮による末梢神経損傷モデルおよび後ろ足片側へのカラギーナン皮下注入により作製する末梢炎症性疼痛モデルを用いた.それらの完成されたモデルにおける腰部脊髄スライスの脊髄後角第II層,第IIIおよび IV層,第V層における細胞内カルシウムイオン濃度を検討した.末梢神経損傷モデルでは,患側第V層におけるカルシウムイオン濃度は,健側に比べ,有意に高い濃度であることが明らかにされた.また,末梢炎症性疼痛モデルでは,患側第IIIおよびIV層,第Vにおけるカルシウムイオン濃度が健側に比べ有意に上昇していることが明らかとなった.現在,これらの脊髄スライスにおける興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の灌流による細胞内カルシウムイオン濃度の変化を患側および健側にて比較検討を行っている.その結果,神経損傷側または炎症側の脊髄後角内細胞群は,グルタミン酸負荷により細胞内カルシウムイオン濃度が健側に比較して有意に上昇することが明らかになりつつある. 引き続き,カルシウムイオン濃度上昇の分布の細かい分析を行うとともに,これら病的疼痛状態において重要とされている情報伝達物質であるプロスタグランジンE2の環流による影響の検討を加える.
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