研究概要 |
1,蝸牛一過性アノキシアのモデル動物の作製:迷路動脈を圧迫することにより一過性に任意の時間血流を遮断したモデル動物の作製に成功した。血流再開後の蝸牛神経複合活動電位(CAP)の閾値は5分間のアノキシアでは不変であったが、10分間では僅かながら有意に上昇し、それ以上のアノキシア時間ではその時間に比例して閾値は上昇し、60分アノキシア群では高度に上昇した。(使用動物:モルモット,以下同様)。 2,蝸牛一過性アノキシア障害に対するマンニトールの効果:フリー・ラジカルのうちでも作用の強い・OHに対するスカベンジャー効果を有するマンニトール(20%,10ml/kg体重)を15,30および60分のアノキシア直後に投与すると,60分アノキシアの場合にはコントロールと有意差はなかったが,前2者ではCAPの閾値はマンニトール非投与動物よりも有意に良好であった。以上1.と2.の結果をまとめ現在Hearing Researchに投稿中。 3,同障害に対する一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤の効果:上記の実験と同様の方法で3種のNOS阻害剤(N^ω-nitro-L-arginine,3-bromo-7-nitroindazole,aminoguanidine)を血流再開直後に投与した。60分のアノキシア後ではすべて無効であったが,30分ではすべての阻害剤で有意にCAP閾値は改善していた。現在Acta Otolaryngolに投稿準備中。 4,内耳液の鉄イオンはアノキシアにより一過性に上昇するが,正常耳に鉄を与えると内リンパ電位は低下することが判明した。鉄イオンの作用につき現在さらに研究中。 5,蝸牛各部位にグルココルチコイドmRNAの発現を認めた。現在Otol Jpn投稿中。 6,アノキシアと同様フリーラジカルが関与していると考えられている音響外傷ではレチノイン酸が有効であり,Cisplatin耳中毒では歪成分耳音響放射が早期発見に有用であることを報告した。
|