研究概要 |
1. 蝸牛一過性アノキシアのモデル動物の作製:モルモットに5〜60分間の一過性アノキシアを作製し,アノキシア前後の蝸牛神経複合活動電位(CAP)の変化を調べ,アノキシア持続時間15分以上の時には血流再開後に明らかな不可逆的変化(CAP閾値上昇)を認めさらにマンニトールがこの障害を軽減することを明らかにした(前年度の研究)。(Hear Res 126:28〜36,1998に報告) 2. 蝸牛一過性アノキシアに対する各種薬剤の保護効果について:上記の結果に基づき,モルモットに15,30および60分の一過性アノキシアを負荷し,下記の各種薬剤投与時のCAP閾値の変化をコントロール値と比較・検討した。 (1) 一酸化窒素合成酵素(NOS)抑制剤:N^ω-nitro-L-arginineをアノキシア1時間前に投与すると,15〜30分のアノキシアではアノキシア後のCAP閾値上昇はコントロール動物に比べ有意に軽減しておりNOが障害に関与していることを明らかにした。(日耳鼻総会1998およびCollegium ORLAS1998(Copenhagen)で発表,Acta Otolaryngolで印刷中) (2) N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体の拮抗剤:3種の拮抗剤(ケタミン,デキストロメトルファン,MK-801)を投与した。前2者では15および30分アノキシア群で有意な保護作用が認められたが,MK-801では効果はなかった。脳虚血における報告とは異なり,蝸牛ではNMDA受容体の関与を否定する所見である。 (Audiol Neuro-otol投稿中) (3) poly(ADP-ribose)合成酵素(PARS)抑制剤:15および30分アノキシア群で3-アミノベンザマイド投与例では有意に障害は軽度でPARSの関与を示唆する結果が得られた。 (HearRes投稿中) (4) Alアデノシン受容体の作動薬:2-クロロ-N6-サイクロペンチールアデノシン(CCPA)を投与すると(3)と同様の保護効果が得られた。(日本耳科学会1998発表,Hear Res投稿中) 3. 蝸牛におけるMn-SODの免疫組織学的検討:内および外有毛細胞,ラセン隆起,ラセン神経節に強い陽性反応を認めた。(日本耳科学会1998発表)
|