研究課題/領域番号 |
09307047
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
榎本 昭二 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (40013940)
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研究分担者 |
平野 泰正 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手
酒井 英紀 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (60292976)
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キーワード | 口腔前癌病変 / 遺伝子診断法 / p53癌抑制遺伝子 / 抗p53モノクローナル抗体 / 口腔多発癌 |
研究概要 |
口腔前癌病変悪性転化を予知する遺伝子診断法確立の目的で、1997年以前に当科を受診、加療した口腔扁平上皮癌および白板症等の前癌病変の生検材料、手術材料及び採取された材料から樹立した細胞株を用いてp53癌抑制遺伝子変異あるいは遺伝子産物の発現について検索した。 1. 口腔前癌病変におけるp53癌抑制遺伝子産物の発現量と悪性転化 口腔前癌病変のパラフィン切片について、抗p53モノクローナル抗体による免疫組織化学染色を行ったところ、異形成の程度が増加に比例して、発現量の上昇を示す傾向があった。さらに、高発現を示す症例について、遺伝子異常の検索を行ったところ、少数の症例をのぞいて遺伝子変異が検出された。このことは、口腔扁平上皮癌発症において、p53遺伝子異常は、少なくとも癌化の前の段階で発生していると考えられた。高発現を示したが、遺伝子異常が検出されなかった症例については、正常蛋白質の過剰発現あるいは検出方法の限界によることが考えられるが、現在検討中である(亀卦川、榎本ら 投稿準備中)。 2. 口腔扁平上皮癌の予後とp53遺伝子変異あるいは過剰発現 p53遺伝子変異の内容と臨床経過を比較し、予後との関係を明らかにする目的で、口腔扁平上皮癌20例について、変異の内容と病理組織型及び予後を比較検討した。高頻度p53遺伝子変異は認めたが、予後との有為な差は認められなかった(平野、榎本ら 投稿準備中)。 以上より、1)p53遺伝子異常は口腔前癌病変が癌化する前の段階で異常が生じていること、2)口腔扁平上皮癌で高頻度でp53遺伝子異常を認めることから、P53遺伝子異常による口腔前癌病変悪性転化の予想は可能であると考えられた。さらに、いくつかの口腔多発癌症例では、前癌病変の時点では遺伝子変異を認めないが、癌化した時点では、それぞれ新たなp53遺伝子変異を獲得していることが明らかとなり、口腔前癌病変の癌化に、p53遺伝子異常が重要な役割を果たしていると考えられた(酒井、榎本ら 投稿準備中)。
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