研究概要 |
1.マスト細胞の増殖・分化におけるヒスタミンとプロスタグランジン(PG)の機能解析: マウス骨髄細胞中からマスト細胞に分化させる細胞培養系を確立し、その機能を、ヒスタミン合成酵素(HDC)とPG産生酵素のCOX、各PG受容体の発現と機能面から解析した。抗原・抗体刺激によりCOX-2,EP,IP,DPの発現増大を認めることを見出した。HDCについては、従来不明であった酵素合成後の活性発現にいたる過程を検討し、翻訳後修飾の分子変化と細胞内局在性をつきとめ、酵素が細胞質のプロテアゾーム分解により制御されることを見出した。以上から、ヒスタミン産生系、PG産生系、受容体系のそれぞれが、マスト細胞の分化に応じて厳密かつ詳細な制御を受け、その分化・増殖に重要な役割を持つものと考えられた。 2.遺伝子欠損によるヒスタミンと各PGの生理機能評価: IP,FP,4種類のEPサブタイプ受容体欠損マウスを作製し、PGの生理機能を受容体ごとに評価した。その結果、FP欠損マウスでは分娩が消失し、PGF2が分娩の遂行に必須な内因性の黄体退縮因子であることが判明した。IP欠損マウスでは、血栓傾向、足浮腫炎症の抑制、酢酸刺激による痛覚過敏の抑制等を認め、PGI2が炎症進展における内因性因子であることを証明した。PGE2はEP3を介して感染性の発熱反応に関与すること、EP4を介して胎生循環から新生児期循環への適応に必須の動脈管閉鎖反応に働くこと、さらにEP2を介して、排卵と受精を促進していることを明らかにした。また、HDC欠損マウスの作製・解析の結果、IgE依存性のI型アレルギーにはヒスタミンが必須であることを見出し、さらにマスト細胞の分化調節因子である可能性を見出した。これらの成果は、マスト細胞の増殖・分化におけるPGとヒスタミンの役割を明らかにするための基礎的知見として重要である。
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