近年のバイオテクノロジーの進歩により、創薬につながる新機能物質の分子設計をめざせるまでになった。生体内で分子は互いの立体構造を認識して、より高次の分子集合体(生体超分子)を形成し、活性部位の効果的配置の結果初めて機能発現がなされるものが多い。本研究では、主にNMR法を用いて、情報伝達を担う蛋白質-蛋白質複合体の構造を解析し、その伝達機構の理解を深め生命現象の重要な現象を解明する手法の開発と共に、医薬への道をさぐることを目指している。本研究では試料としてインスリン様成長因子(IGF)、骨形成因子(BMP)等の系を取り上げ、遺伝子操作から、溶液物性の解析、NMRによる高次構造解析、活性複合体の超分子解析、動的構造解析と一貫した生体超分子形成機構の解析を系統立てて行っている。成果として、 1.IGF、BMP、BMPレセプターについて大腸菌による発現系を構築した。その結果NMR測定に不可欠な安定同位体標識した試料が容易に得られるようになった。 2.BMPレセプターについて、BMPとの結合部位に関する知見を、遺伝子工学的に作製したキメラ蛋白質等を用いることによって得た。また結合時の分子間相互作用を、沈降平衡法、表面プラズモン共鳴センター等を用いて解析した。 3.多核多次元NMR法を用い、BMPレセプターの細胞外ドメインについて、ほとんど全ての共鳴線を帰属することができ、NOEなどの構造情報を収集して溶液中における立体構造を解析することができた。
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