研究概要 |
生体分子には互いの立体構造を認識して、より高次の分子複合体(生体超分子)を形成し、活性部位の効果的配置などの結果初めて機能発現がなされるものが多い。特に情報伝達を担う生体分子群においては、分子複合体の形成がその機能そのものであるといえる。本研究では多核多次元NMR法を用いて、情報伝達を担う蛋白質-蛋白質複合体の構造や運動性を解析し、その伝達機構の理解を深めることを目指した。また複合体形成を沈降平衡法、熱測定といった物理化学的手法で解析し、その形成メカニズムや構造安定化機構などに関する知見を総合することを目標に研究を行い以下のような成果を得た。BMP、BMPレセプター(タイプI,II)の発現・精製系を確立した。結合活性の測定のためには分析用超遠心機を用いた沈降平衡法・沈降速度法によって結合定数を定量的に見積もる方法論を確立することができた。また表面プラズモン共鳴センサーを活用した速度論的な解析も行った。さらに構造活性相関について知見を得るため各種のアミノ酸置換変異体を作成し、複合体形成に寄与しているアミノ酸残基を特定することができた。BMPレセプターについては安定同位体ラベルした試料を調製し、多核多次元NMR法を用いることによってほとんど全ての核のケミカルシフトを帰属できた。さらにNOEなどの構造情報を収集し立体構造を決定することに成功した。また複合体形成の際のケミカルシフトの変化を観測することで、その様子を原子レベルでモニターすることが可能になった。
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