研究課題
基盤研究(A)
本研究では、来るべき高齢化社会を念頭に置いて「発育期における過度の運動トレーニング」が中高年以降の身体機能にいかに影響するかを知ることを目的として、運動生理学的見地から検討した。発育期における「過度のトレーニング」及び「種目限定・活動内容の限定」の影響が、スポーツ活動を行わなくなって以降の身体諸機能に及ぼす影響を呼吸循環系及び運動器系の生理機能を中心として検討することで得られた科学的データを基に、「生涯スポーツ」の見地からみた発育期の適切な運動処方プログラムを作成するための基礎的資料を提供することを具体的な目的とした。測定項目としては、一般的な形態計測に加え、全身持久力の指標とされる酸素摂取量、心エコーを利用した心機能測定等、従来は成人においてのみ、あるいは疾病を有する患者にのみ実施されてきた測定を行った。また、運動器に対する影響については3週齢より飼育を開始した雄性・雌性ラットを用いて骨及び骨格筋に対する長期運動トレーニング並びに脱トレーニングの影響を検討した。ラットの平均寿命は約2年から3年程度であり、骨格筋の発達の程度から生涯を4段階に分類することが可能となった。ラット骨格筋では生後3週齢の離乳期に多重神経支配が単一神経支配へと変化する(第1ステージ)。性成熟完成期(第2ステージ)。生後40週齢前後までの筋重量増加、筋力増加期(第3ステージ)。相対的骨格筋重量が低下する老化期(第4ステージ)。ラットのライフステージを直接ヒトに当てはめることは非常に困難であるが、ヒトにおける「発育期」はラットの場合、性成熟が完成する前後の第2から第3ステージにかけてと考えられる結果を得た。今後、実験動物のデータを発育期における児童、生徒に応用するために必要不可欠なタイムテーブルが作製され、動物実験の結果をヒトに外挿するための基礎的資料が得られた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (12件)