研究概要 |
本研究では,非中性プラズマの新たな閉じ込め方式(トーラス系磁気シヤー配位)を開発し,その平衡,安定性,緩和現象を総合的に研究することによって,非中性プラズマの理論的体系を構築するとともに,高β平衡の形成や,核融合プラズマ物理の基礎実験など新たな応用の可能性を明らかにした. 本方式を,従来から非中性プラズマの研究で使われてきた直線型磁場・電場閉じ込め方式(Penningトラップなど)と比較すると,(1)高エネルギー粒子の閉じ込めが可能である,(2)高密度閉じ込めが可能である,(3)多種粒子の同時閉じ込めが可能である,という特徴をもつ.このトーラス閉じ込め方式の鍵となる原理は,(A)磁気シヤー配位である,(B)粒子運動のカオスを利用した無衝突拡散によって粒子を注入する点にある.これらの特性と原理を活かして,(I)高速回転流系における新たな緩和状態の研究,(II)カオスによる異常拡散・異常抵抗の研究,(III)シヤー流による非エルミートダイナミクスの研究,(IV)静電揺動の磁気シヤーによる安定化の研究を行った. 通常「プラズマ」というと,平均すると電気的に中性の荷電粒子多体系を指す.核融合エネルギーの研究に関連して進歩してきた高温プラズマの物理も,主として中性プラズマを対象としたものである.しかし,プラズマ物理の学理は,電磁力によって相互作用する多粒子系の「集団現象」に係る非線形科学として深化し,一般的な基礎学術へと発展している.なかでも,中性条件を取り除いた「非中性プラズマ」の研究は,プラズマ物理の視界を格段に広げるとともに,さまざまな分野が関連する新領域の創成につながるものと期待される.非中性プラズマでは,中性条件下でいわば縮退していた物理的効果が発現し,新たな特性が見出される可能性がある.その最も重要な効果が「自己場(self-field)」すなわち電気的非中性に起因する総体としての自己電場に起因する流れの発生である.本研究では,自己場による流れをもつプラズマの物理を,重力多体系(銀河)などとも共通の物理的課題としてとらえ,その平衡構造の自己組織化,非エルミート性によって引き起こされる多様な科と現象,運動論的効果などについて新たな知見が得られた.
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