研究課題/領域番号 |
09308017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山脇 道夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30011076)
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研究分担者 |
小原 祥裕 日本原子力研究所, 核融合工学部, 主任研究員
野田 健治 日本原子力研究所, 本部, 主任研究員
小野 双葉 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00011198)
山口 憲司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50210357)
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キーワード | 核融合炉材料 / 表面ナノ領域 / 仕事関数 / 高温蒸発挙動 / 雰囲気制御 / 不定比層 / 高温ケルビン計 / 「その場」測定 |
研究概要 |
今年度はLi_2Oを対象に、雰囲気制御型クヌーセン質量分析計ならびに高温仕事関数測定装置による測定を行い、得られた結果を前年度のLi_2TiO_3、Li_2ZrO_3の結果と比較した。Li_2Oに重水素(D_2)を添加することにより、Li(g)の蒸発が促進され、また、D_2とLi_2Oの反応により生成するD_2Oにより、LiOD(g)による蒸発も促進されることが分かった。一方、高温・水素導入時の仕事関数測定を行ったところ、Li_2Oでは、仕事関数変化は酸素分圧の変化に追随していなかったので、酸素空孔生成によるものではないと考えられた。この結果は、酸素分圧に対する仕事関数変化の追随性が見られず、水素の吸着・脱離が仕事関数変化の主な変化要因であると推定されたLi_2TiO_3の挙動と似ていたが、酸素空孔を生成すると推定されたLi_4SiO_4、Li_2ZrO_3の結果と明白に異なるものであった。 また、高温蒸発実験の結果をもとにして、Li損失と温度の関係を、各Li系セラミックス増殖材科について評価した。ここでは、上流側から一定分圧の水素を導入した場合の系内のLiを含む蒸気種の合計分圧を、各測定から得られた平衡定数を用いて算出した。計算の結果、Li損失の観点からは、LiAlO_2が最も有利で、Li_2ZrO_3、Li_2TiO_3、Li_4SiO_4についてはほぼ同程度であったものの、Li_2Oが最も劣ることを示した。一方で、Li_4SiO_4とLi_2ZrO_3については、D_2導入による酸素ポテンシャルの変化が蒸発反応の平衡定数に変化をもたらすことを観測した。その結果を踏まえて上記の計算を行うと、低酸素ポテンシャルではLi損失が低く抑えられることがわかり、その傾向は特にLi_4SiO_4で顕著に見られた。この原因として、表面近傍層の非化学量論性(酸素不足層)が考えられ、高温仕事関数の測定結果と符合する。 さらに新しい研究の展開として、照射下での仕事関数測定が可能な装置体系を構築した。
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