研究概要 |
ミトコンドリア蛋白質の殆どは細胞質で前駆体として合成され、細胞質因子によってミトコンドリアの受容体に運ばれさらに膜を輸送されてそれぞれの区画に局在化する。本研究費の補助による3年間の研究で次の事柄を明らかにすることができた。 【1】細胞質因子MSFの機能解析:ミトコンドリア外膜受容体の細胞質領域の組み替え体(Tom70f、Tom20f)を用いて前駆体との結合を解析し前駆体のターゲティングにおける細胞質シャペロンの重要性を明らかにした。 【2】外膜受容体と前駆体の相互作用解析:Tom70f、Tom20fおよびTom22、Tim23の膜外領域と前駆体との結合を解析した。そして外膜の内外に配置された輸送因子の酸性ドメインは輸送経路の下流にあるものほど前駆体への親和力が高いことを証明し、これが駆動力となって外膜透過が起ることを明らかにした。 【3】外膜受容体因子の同定:37kDaの外膜蛋白質OM37が前駆体輸送における受容体として機能することを示し、OM37のcDNAクローニング、抗体の作成、抗体を用いた他の輸送因子との相互作用の解析などを行い、哺乳類ミトコンドリアに於ける新規な輸送因子であることを明らかにした。その他、外膜受容体Tom70,Metaxin、外膜の輸送チャネルの主要成分Tom40のクローニングとそれらの性質の解析を行った。 【4】Tom20のターゲティング機構:外膜蛋白質のターゲティング機構を明らかにするためTom20-GFP融合蛋白質を用いてin vivoとin vitroで解析を行った。そしてTom20のN-末端の疎水性の膜貫通領域(TMD)とその直後にある塩基性アミノ酸とが共同してターゲティングシグナルとして働くことを見出した。TMDはSRPによって認識されるが、直後の塩基性アミノ酸がこの認識を阻害し、その結果ERへのターゲティングを回避してミトコンドリアへのターゲティングを行うことが明らかになった。 【5】シトクロムc輸出機構:哺乳類ミトコンドリアは細胞外からのシグナルに応じて膜間スペースのアポトーシス因子(シトクロムcなど)を細胞質に放出しアポトーシスのカスケードを誘発する。我々は20SプロテアソームがdATP(orATP)とスタウロスポリンに依存してシトクロムcの放出を行うことを明らかにした。 【6】内膜輸送系の解析:ラットミトコンドリアの内膜輸送因子rTim17、rTim23,rTim44をクローニングし、その性質を解析した。さらに内膜透過の素過程の解析を行った。
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